「B社」、「S社」、「Y社」という、比較的若い層をターゲットにしたジュエリーショップ、「K社」(三重)、「O社」(富山)、「E社」(石川)といった専門店に共通するのは、訓練され、スキルを持った販売スタッフの充実と同時に、顧客のニーズを読み、先へ先へと商品を投入していくマーチャンダイジングが実行されていることである。
売れ筋を分析して強化し、死に筋を排除し…というマーチャンダイジングの基本を日々積み重ねてきた結果として、いまの、成熟した顧客にも支持される、ショップとその品揃えが出来上がっているのである。
いまの消費者は、ひとことで言えば「ディマンディング」である。
簡単に妥協しない。
デザイン、品質、価格すべてに納得しなければ、買ってくれない。
一度その店で買ったとしても、良い商品が他で見つかれば、違う店で買ってしまう。
囲い込めず、固定化しない。
したがって、そういう消費者を絶えず引きつけておくには、その店の店頭にいつも新鮮な商品を置き、しかもその商品情報が、絶えず店頭から発信し続けられなければならないのだ。
そのエリアで、どこよりも魅力的な商品がいつも揃っていて(マーチャンダイジング)、その商品の魅力を、エリアとその顧客に絶えず発信し続ける努力(販売力とプロモーション活動)がなければ、いまの顧客は簡単にどこかへ行ってしまうのである。
「小売店では『良い物』があることがその根幹をなす重要なサービス要素です。
したがって、品揃えは立派なサービスなのです」と、マーチャンダイジングの重要性を指摘されている。
もはや、物不足の時代ではない。
逆に、消費段階ではダブつき気味なのである。
そこで商売をするには、消費者が欲しいという商品を誰よりも早く見つけ、店頭化しなければならない。
しかも、在庫リスクをヘッジし、効率良くその戦略を実行しなければ、企業として安定しなくなる。
必要なのは、体系的に構築されたマーチャンダイジングという戦略である。
積み上げられ、検証されたその店その店のマーチャンダイジングだけが、成熟した市場でのディマンドデイングな消費者の顧客満足を勝ち得ることが出来、企業を勝利に導くことが出来る。
これからの小売店経営にもっとも必要な、マーチャンダイジングの考え方と概要について、ここで説明する。
マーチャンダイジングは、日本語では単に「品揃え」と訳されているが、「計画され、合理的に構築された品揃え」をのみ、マーチャンダイジングと呼ぶ。
ジュエリーという商品は非常に幅広く、価格を例にとっても、下はピアスの千円クラスから、上は高価な貴石がついた何千万円クラスまであり、ひとつの物差しではコントロールしにくい。
そのことが、ジュエリーの品揃えを合理的に計画しようとする際の障害になってきた。
マーチャンダイジングとは、かつてはメーカーや卸企業が商品を開発することを指していた。
小売店は、メーカーや卸の指導に従って棚を空け、供給された商品をただ並べていたのである。
良い商品が不足し、マーケットの主導を、メーカーを中心とするサプライヤー側が握っていたからである。
このように、サプライヤーが主体となって商品企画、見込生産がされ、小売店に供給されてくる一連のプロセスを、「プロダクト・アウト・マーチャンダイジング」と呼び、そこでは小売店や消費者は、あくまで従属的立場にあった。
しかし時代は大きく変わった。
物はあふれ、消費者も成熟する。
消費者の選択眼は厳しくなり、選択の幅も非常に広くなった。
ここで、マーケットの主役は逆転し、消費者に移ることになる。
バブル崩壊による消費不況は、その力関係をさらに決定づけるものになった。
消費者の財布の紐はかたくなり、生半可な商品では、もはや消費者は見向きもしなくなった。
マーチャンダイジングのプロセスも、ここから大きく変わり始める。
まず、出発点は消費者の購買動向がすぐに見える小売店に置かれた。
スーパーやコンビニのPOSレジは、そのもっとも進んだ形である。
メーカーや卸は、小売店での販売状況をヒヤリングし、その結果をスクリーニングして、商品開発を進めていく。
この流れを、「プロダクト・アウト」に対して「マーケットイン・マーチャンダイジング」と呼ぶ。
これからの時代は、まずこのマーケットイン・マーチャンダイジングが前提になる。
何が売れ、何が売れなかったのか。
売れ足はどうか。
使用後の顧客の反応はどうか。
リピートがあったのか、なかったのか。
すべてはここから出発し、ここに収敵していく。
「我々は川上と川下の議論を逆転して考え始めた。
つまり、川上はメーカーではなく、店頭、市場である。
メーカーは店(市場)の要望に応じて提供していく川下という意識革命が今こそ必要だ。
これは販売、物流生産、研究開発などすべてに当てはまる基本だ。
したがって、この動きに適合するよう、会社の仕組みそのものを変えていいかなければならない」。
消費者を主体に考えるということは、すべてを逆にしなければいけないということである。
そこまで追い詰め新しいシステムを構築しないと、マーチャンダイジングは完成しないということである。
まず、すべての販売情報は小売店にあるわけだから、小売店で情報がきちんと集められなければならない。
そういう意識を持って、情報を集めるシステムが、小売店の社内に作られなければならない。
次に、集められた情報が、あるルールにのっとって整理され、分析されなければならない。
そうして、その分析された情報は、卸企業やメーカーに伝えられ、それに対応した商品が開発/生産されなければならない。
そうして、再度それらの商品は店頭に集められ、最終的に、その店のすべての品揃えに生かざれることになるのだ。
そういう流れが、これからのマーチャンダイジングでは出来上がらなければならない。
メーカー→卸→小売店→消費者ではなく、消費者→小売店→卸→メーカーという逆の流れ、逆の構造の中で作られるマーチャンダイジングを身に付けることが、これからの必須課題である。
マーケットイン・マーチャンダイジングが、今後の命運を決する。
現場がすべてであるマーチャンダイジングの出発点と帰着点は、現場である。
百貨店の凋落には、様々な理由が指摘されているが、その中の重要な要因のひとつに、販売現場の軽視という問題がある。
「委託販売」「派遣店員」、さらには「販促費」という名目での経費押しつけなど、商売の基本要素である「人」、「物」、「金」すべてをベンダーに任せてしまっている。
これこそ現場軽視の最たるものであり、百貨店がスペース・ブローカーという一種の不動産屋になってしまった証拠である。
宝飾に限定して言えば、商品がわかるバイヤーをスタッフとして置いているのは、D社、I社、小田急など数社に過ぎない。
あとは、他部門から一定のローテーションで回ってきたスタッフであり、宝飾を一般商材として見る能力しか持ち合わせていない。
これではベンダーの言うに任せたオペレーション以外や量がなく、百貨店サイドのスタッフは、ベンダーの入れ替えにのみ腐心することになる。
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